肢体不自由児の運動機能や姿勢を発達させるための指導法と順番   ゆざわひろみ
--○○◎◎ 公開 2019年03月09日
 肢体不自由児の運動機能や姿勢の発達を、どの様に導けばよいのかわからない方のために、一つの道標を作ってみました。
 順に従い指導を進めてください。
 記している内容と異なった動きや姿勢は、誤学習した結果で行っているかも知れません。誤学習しているならば、できるだけ早期に訂正してあげたいです。
 誤学習の訂正が遅れると、正しい機能を学べなくなることもあります。
 貴方の指導によって、肢体不自由の我が子が思わないほどの機能の変化をもたらすかも知れません。
 肢体不自由児も、ある程度までの自然発達を行います。できていない箇所から指導を出発してください。出発して、指導ができていないと想われた時には、できていない箇所まで戻ってください。
※ この項については、へるす出版発行〈 立つ・歩くことを考えた 脳性まひ児のリハビリテーション -運動機能獲得へのアプローチ-〉に記してあります。参考にしていただけると幸いです。写真も導入されているのでわかりやすいと思うのですが・・
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 肢体不自由障害の程度によって、出発点が異なります。
 我が子の運動機能の発達状態をチェックするには、 「肢体不自由児の発達評価法」 を参考にしてください。


   誰もが行う全身のストレッチ
   首のすわりから座らせてもらっての坐位保持まで
   自分で床に座るところから四つ這い(尻這い)まで
   つかまり立ちから独歩まで
   屋外の歩行に・・
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 誰もが行う全身のストレッチ
 身体の自由を奪われて、その不自由な身体が生涯継続することが明らかなときに、肢体不自由障害とか運動機能障害と言われます。
 身体の自由を奪われた障害だから、身体を自由に動かすことができません。
 どの人でも同じですが、身体を一定期間動かさなければ、その動かさなかった箇所の身体は、動かなくなってしまうのです。例えば、骨折でギブス固定の治療を受けたとき、ギブスが外れても固定されていた関節が動かなくなっているのです。
 (ギブス固定での骨折治療は、ギブスカット後に関節の動きに制限を起こすので、今ではプレートでの固定を行い、関節の動きを制限することが減っています。)
 身体の自由を奪われた身体、誰かが外から身体を動かしてあげなければその関節が動かなくなってしまいます。
 動きたくても動けない障害なのか? 動くのに不自由があってもどうにか動く障害なのか? 程度がどれ程であっても動きやすく保つために、肢体不自由児の全身のストレッチが必要となるのです。
 こちらをご覧ください→ 身体が硬い 関節が動かない ストレッチによって何が変わるのか
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 首のすわりから座らせてもらっての坐位保持まで (基礎訓練)
 肢体不自由児のお子様を始めて診て、驚くのがこの様な状態で留まっている子どもです。
 私たちはこの時期の訓練を「基本訓練または基礎訓練」と呼び、月齢の低い乳児や幼児には欠かさずに行います。
 この項で取り上げるのが「仰臥位→腹臥位→首のすわり(頸定)→寝返り→持ち込み坐位」までとなります。
 いろんな姿勢や動きを通じて、子どもに首のすわりと座らせれば座れるようにすることと、寝返りができるようにすることです。
 この項に記す内容が、子どもが学べないときには、生涯が自らでは移動できない障害を覚悟しなければなりません。
① 仰臥位から腹臥位
 新生児は仰臥位で寝かされていることが多く、生後のある一定の日を経過してから横向きやうつ伏せとなっていきます。
 肢体不自由児と呼ばれる子どもの中には、仰臥位で寝かされている期間が長く、横向きやうつ伏せになることが遅れて、うつ伏せが嫌いな子どもとなっているのでは…?
 うつ伏せ位が嫌いだと、寝返りを行わなくなったり、寝返りの時期が遅れます。
 仰臥位だけでなく、うつ伏せ位ができるように指導したいです。
② 首のすわり(頸定)
 首のすわりは、これからの子どもの運動機能の発達に大きく影響する発達の一つです。
 うつ伏せ位によって顔を上げて、物を見聞きすることによって首がすわっていきます。
 うつ伏せ位ができないと、顔を上げることを学ぶことができないので、首のすわりが遅くなります。
 うつ伏せ位や坐位保持練習によって、首のすわりを促進したいです。
③ 寝返り
 仰向けに寝かされていた乳児が、何かに興味を引かれて横を向き、更にうつ伏せとなれば、寝返りを半分行ったこととなります。
 うつ伏せから仰向けに戻れずに、もがく動きをする時期もありますが、間もなく仰向けからうつ伏せ位、うつ伏せ位から仰向けに、寝返りを行うようになります。
 寝返りは世に出てきて始めて行う移動法です。
 寝返りを生後6ヶ月が経過しても行わないのであれば、指導して行えるようにしたいです。
④ 持ち込み坐位
 【「持ち込み」という単語が登場します。持ち込みとは、その姿勢にさせてあげることを指します。ここでは坐位の前に着いているので、坐位の形にしてあげることを指します。】
 乳児は、大人の身体の前で抱えられるように座ることを好みます。
 しかし何時までも抱えられていることは嫌いで、自ら姿勢を正して座るようになっていきます。
 だが肢体不自由児では、何時になっても抱えられていることが好きで、自ら座ることを学ぼうとしないのです。
 そこで坐位に持ち込んで、坐位保持ができるように指導することとなるのです。
※ この基礎訓練によって、首のすわり、寝返り、座らせてもらえば少し座れる、この姿勢や動きを学び獲て欲しいのです。
 この基礎訓練のいずれかが学べないと、今後の運動機能の獲得が難しくなります。

 自分で床に座るところから四つ這い(尻這い)まで 機能訓練
 臥位から自分で床に座ることと、四つ這いを行うこととは違うことのように想われがちですが、一連の動きなのです。
 臥位から床に座るためには、うつ伏せ位から尻と膝を曲げて、尻を高く持ち上げるようにしながら腹の下に膝が入るような姿勢となります。
 膝が腹の下に入るような姿勢となってから、腕の力で体幹を持ち上げて、足首の上に尻を落とします。
 月齢が小さいと手足が短いので、足首の上に降ろした尻は、足首を超えた床におり、足は赤ちゃん座りとなって腹の前に位置します。
 月齢が高くなると手足が長くなり、足首に落とした尻はそのまま足の上に座ることとなります。
 この自力での床に座る動きは、ただ座るということを行っているだけでなく、動きの途中は四つ這い位をとっているのです。
 ですからこの座り方以外で座り方の指導を受けると、四つ這いを行うことが難しくなり、尻這いを行う結果となるのです。
※ 自分で床に座るための股関節と膝関節を同時に曲げる動作は、なかなか学習することが難しいのです。
  「LS-CC松葉杖訓練法」 「さんぽ」 を参考にしていただけると幸いです。


 つかまり立ちから独歩まで
 つかまり立ちから独歩に移行することは、人間としての特徴である二足歩行の開始を意味しているのです。
 手足の不自由な肢体不自由児にとって、つかまり立ちや伝い歩き・独歩に至る過程はかなり難しい課題です。
 手が不自由のために、つかまり立ちが行いにくい、伝い歩きを経験できない、このようなことは独歩に至るための大きなバリアです。
 このバリアを克服したのが、「LS-CC松葉杖訓練法」なのです。
※  「さんぽ」 「LS-CC松葉杖訓練法」 を参考にしていただけると幸いです。


 屋外の歩行に・・
 独歩ができるようになった! とはどの様なことを指すのか?
 独歩ができるようになった、杖歩行ができるようになった、このように判断するのは、一つには屋内を移動することができる。しかし現実の独歩や杖歩行とは、屋外を目的地まで歩いていけることを指すのです。
 屋外を歩くためには、車や人を避けて歩き、目的地まで徒歩や公共機関の交通機関を利用できなければなりません。
 その他にも、段差や坂道も上り下りすることが必要で、これらができていなければ実用の歩行とは言えないのです。
 実際に応用できる歩行を獲得するためには、段昇降や坂道の昇降、立ち止まりや方向変換が容易にできなければなりません。
 病院や療育施設の屋外に出て、階段や坂道、バスやタクシー、電車の乗り降りも経験しておかなければなりません。
※  「さんぽ」 を参考にしていただけると幸いです。

 基本的な運動療法の進行方向を示し、簡単に内容も記してみました。

 わからない、理解できない点については・・・ こちらまで→
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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美